学生時代、俺は軽音楽部に所属していて、その同期入部者に「猪飼」ってヤツが居た。

名古屋出身のHMドラマーで、いつもドカドカとツーバスを踏んでいた彼は、ドラムと同時に登山も大好きで、
そんな彼の事で忘れられないエピソードがある。


ある日、大雪山に登ろうと軽自動車で出かけた彼。
山路を走行中、突然目の前に大きな鹿が飛び出してきた。
止まりきれず、そのまま鹿の横っ腹に衝突。

しばしの沈黙の後クルマを降りて、倒れたまま動かない鹿に恐る恐る近づくと、
死んだとばかり思っていたその鹿が突然むくりと起き上がり、「何しやがるんだ!?このやろう!」とばかりに一瞥をくれると、再び山へ走り去ったのだそうだ。

鹿が生きていたことに安堵してクルマに戻ろうとすると、
ボンネットはブッ潰れ、ラジエーター液だか何だか分からないものがボタボタと垂れている…。

大雪山麓で自走不能。
しかも真夜中。

まだ携帯電話も普及してない頃の話。
一晩中、真っ暗な山路を歩き続け、やっと辿り着いたホテルで電話を借りて、朝を待って札幌の友人にレスキュー要請…。

電話を受けた友人も、何が何だか訳が分からなかったとのこと。
そりゃそうだ。
寝起きに「大雪山、鹿と衝突、自走不能、助けてくれ」って聞かされるんだもんwww


そんな彼が実家の仕事を継ぐことになり、札幌を離れるとの事で、ささやかながら送別会を開いた。

先の「鹿事件」を含め、思い出話に盛り上がっていたんだけど、
「俺は、本当は札幌で暮らしたいんだよ」
そういうと、酒も手伝ってかポロポロと涙を流した彼。
淋しいけれどお別れだ。


それからしばらくして、これまた彼の事で驚かされることになる。
名古屋でバイクでの通勤中に事故を起こし、下半身付随になってしまったのだという。

人生の岐路に立たされたとき、彼の奥さんの実家が札幌にあるとの事から、再び札幌で生活する事が決まった。
彼の「札幌で暮らしたい」という願いは、数奇な形ではあるけれど実現したわけだ。

札幌に戻ってからの彼は、持ち前のポジティブさも手伝って、車椅子を使ってのスポーツに挑戦しまくり。
チェア・スキーで腕を骨折したときには、友人一同から「両足が動かねぇのに手までヤッちまってどうするんだ!?馬鹿野郎www」と賛辞を受けたりしてた。

武尊のライブにも来てくれたときには本当に嬉しかったよ。


で、共通の友人から知らされた彼の近況にまたビックリ。

http://m.youtube.com/my_watch_later_videos#/watch?feature=plpp&v=6LMHl-A0aJc

車椅子でキリマンジャロに登ってやがった!!www
こりゃ驚いたね。

どこまでも話題に事欠かないヤツだ。